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プロフェッショナルの感性を刺激する旅Vol.14~建築プロデューサー・肥田健さんのハワイ島・ビッグアイランド

プロフェッショナルの感性を刺激する旅先と、その思い出をお聞きするインタビューコンテンツ。今回は、建築プロデューサーとして数々の建築物に関わってきた肥田健さんに、ご自身の生き方やハワイ島での経験についてお聞きします。

建築の世界の中で“なくてはならない”、ある専門的なジャンルの第一人者として、名だたる建築家からの厚い信頼と支持を集めている肥田健さん。東京駅の丸の内駅舎や多摩美術大学の図書館、二子玉川ライズなど、数々の個性的かつ話題の建築物の設計に関わってきました。

「建築家のプランだけで建物を作ることはできません。実際にどのような部材を使って、どのような構造にし、どのように組み立てるのかを表現する、具体的な製作図面、施工図面に置き換える必要があります。私が請け負っているのは、これらの図面を用意し、さらに関係者と調整しながら、より現実的に段取りを進めていく仕事。いうなれば、設計者のイメージを具現化する建築プロデュースをお任せいただいています」

建築物というのは、いわば柱や梁といった比較的大きな部材から、小さなタイルや金具類にいたるまで、無数の細かなディテールが積み重ねられたもの。その一つひとつの仕様を決定して図面化したり、製造指示を出したり、工事用の図面を作成して、担当者に指示したりする必要があります。業務範囲は幅広く、そしてタスクの数も非常に多い。しかも、建築物というのはひとつとして同じものは存在せず、すべてがオリジナルなのだといいます。

「“これって本当に構造的に建築物として成立するのか?”というような難しい要求に対して、決して“無理です”とはいわない。だって、建築家の方々が寝食惜しんで、ひねり出した素晴らしいアイデアなのですから、それをどうやれば具現化できるのか、私だって必死に考えますよ」

日本の建築技術が世界的に高い評価を集めているというのは、揺るぎのない事実なのですが、それも“無理なことにチャレンジしてきた歴史”があるからこそと肥田さんは考えています。

「私は、まず“意匠ありき”だと思っているのですよ。単に雨風しのげればいいという味気のない建物ではなく、美しく複雑で、一見、無理?とも思われるようなデザインを建築家が考え、それを実際に形にしてきた歴史があるからこそ、日本の建築が“文化”にまで昇華していったのです。私は、そんな建築家の思想までも具現化することで、文化の担い手として貢献していきたいと考えています」

この仕事において何よりも大切なのは“経験”なのだと語る肥田さん。数多くの難易度の高い建築物を実際に形にしてきたからこその自信と引き出しの数はもちろんのこと、そこから生まれるアイデアを集結することが何よりも重要だといいます。

「製造や工事など、多くの専門家を巻き込んではじめて成立する、“ひとりではできない仕事”です。製造や工事に関する知識はもちろん、多くの人々に賛同してもらえるような交渉力も重要。フレンドリーな対人姿勢、ロジカルなトーク、そして情熱などなど、不可欠な“人間力”も含む、総合的なプロデュース力が必要となります。それは仕事はもちろん、人生経験を重ねて、人としての器を大きくすることで獲得できるものと考えます」

ヨーロッパの旅で“知ってしまった”こと

一貫した経験主義。それは肥田さんの、生き方全体に色濃く表れています。

「初めての海外旅行は大学の卒業旅行。当初は2か月間どっぷりイギリスで語学研修でもと思っていたのですが、親戚の勧めもあって、“この時期にしかできない経験を”とヨーロッパ周遊に切り替えたのです」

初めての海外、初めてのヨーロッパでは目にするものすべてが鮮烈に映ったといいます。

「地球というものを平面ではなく、球体で感じることができた初めての経験でした。また国境を越えるごとに言葉や貨幣、食べ物や文化そのものが変わるということを、教科書上ではなく、この目で見て、触れて実感しましたね。本当に良い経験だったと思います」

帰国後は、内定していた大手ゼネコンに入社。輝かしい社会人生活が始まったにも関わらず、一抹の寂しさを拭い去ることができなかったといいます。

「仕事は好きだし、尊敬できる先輩もたくさんいた。でも、このままでいいのかと、入社当時から思ってしまったのですよね。だって、ヨーロッパ旅行で、広い世界や人生の楽しみの片鱗を知ってしまったのですよ。先輩方のように家族を顧みず、趣味も持たずに仕事に没入するって生き方には一切興味は持てなかったのです」

一方、会社に顔を出す協力会社の社長たちは、真っ黒に日に焼けて人生をエンジョイしているように見えたのだといいます。

「自由であることを選びたいと思いました。やはりこれは独立するしかないだろうと。もちろん、リスクがあるのは承知の上で、何ごとにも縛られずに、主体的に一度きりの人生を楽しみたい。それであれば、制限を排除すればいい。後で後悔する人生なんて御免だと、30歳を機に独立したのです」

最初から仕事が順調に行っていたわけではありません。でも、常に気持ちはポジティブでいられたのだといいます。

「考え方ひとつで大きく変わりますよ。自分が満足いく人生にはしたかったけれども、それをラクして手に入れようなんて思ってもいませんでしたからね。それが手に入るなら喜んで努力する、そう思っていましたね」

だからこそ、オン/オフの切り替えは大切にしたい。全力で仕事をして、しっかり休んで全力で楽しむ。そんな日々を繰り返しながら、独立後の日々を乗り切っていったといいます。

「けっこう多趣味なんですよ。旅行はもちろん、サーフィンやゴルフ、音楽、最近は書道もはじめました。遊んだ後は、仕事が新鮮に映ったり、あるいは仕事の面白さに改めて気づいたりしていましたね。そして、また頑張ろうって。仕事ばかりだと飽きるし、恐らく遊んでばかりでも飽きる。バランスよく両立しているからこそ、その両方が面白く感じられると思うのです」

さらに、オン/オフをしっかり切り替えることで、人間的な成長も遂げるはずだという。

「欧米人なんて、仕事ができる人ほどバカンスを楽しんでいる。だから人間のキャパも広がり、寛容にもなれるんですよね。キャパが広がれば、多少の無理を受け入れる余裕ができます。先ほど述べた、“はじめから無理”と言わない、そんな仕事に対する姿勢も、旅を楽しんだり趣味を楽しんでいく過程で醸成されていったのだと感じています」

ハワイ島で見た美しい星空に癒される

オン/オフを繰り返し、あらゆる趣味にチャレンジ。やりたいことや夢を羅列したリストは数百行にも上っているという肥田さん。好奇心に任せてあらゆる場所へ旅行もしたのだといいます。

「中でも最も印象に残っているのはハワイ島“ビッグアイランド”です。溶岩と道路だけで、本当に何もない場所だけれども、それが逆に刺激的でした。コンドミニアムのBBQスペースで知り合った方がハワイ島の達人で(笑)、マウナケア中腹にある『オニヅカ・ビジター・センター』の先のオフロードを走って、最高のスポットに連れて行ってくれました。そこでみた星空は生涯忘れることはできません」

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ニューヨークで暮らすような旅を

そんな肥田さんが今、もっとも惹かれている旅先はニューヨーク。それもロングステイで楽しみたいといいます。

「昔から大好きだったニューヨークには、一度、訪れているのですが、今度はそこで長期滞在をして、生活を楽しんでみたいのですよね。しかも、ただ生活をするのではなく、今から4年前、51歳の時に始めたサックスをジャズの本場で学んでみたい。これも、例の夢のリストの中にしっかり記されているのです」

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一つのことを極めるよりも、マルチで幅広い人間になりたいという肥田さん。自分の中の多様性を否定せず、可能性を限定しない生き方に共感を覚える人も多いはず。旅は、そんな肥田さんにこれからも刺激と癒しを与え続けるのでしょう。

肥田 健さん https://www.facebook.com/hida.ken.5

インタビュアー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション

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