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プロフェッショナルの感性を刺激する旅Vol.5~映像作家・大須賀淳さんのオーストリア・グラーツ

プロフェッショナルの感性を刺激する旅先と、その思い出をお聞きするインタビューコンテンツ。今回は、映像作家の大須賀淳さんに、オーストリア第二の都市であるグラーツの魅力と、映像のプロならではの“街の見つめ方”について伺いました。

映像作家の大須賀淳さんが活躍するフィールドは実に幅広いものです。様々な企業から依頼を受けてのプロモーション映像はもちろん、学生に向けて開催される会社説明会や株主総会の場で放映される映像制作、あるいはCSの通販番組や各種セミナー映像、ウェブ動画まで手がけています。

「以前はCMの延長線上にあるような、ブランディング重視の映像作品が所望されるケースが多かったのですが、最近では企業が求めるニーズも徐々に変わってきているように思えます。ご存知の通り、ウェブの世界においては、アクセス数はもちろん、そのうちの何人が実際に購買したのかまで数値で結果を確認できるようになりました。そのため、映像に対してはっきりとした効果を期待する企業が増えているのは確かです」

確実に結果を出す映像を作る。顧客からそんな強烈な命題を与えられていると自覚する大須賀さんは、一般的な映像作家とは一線を画し、コンサルティング領域にまで果敢に踏み込んでいくのだといいます。

「ヒアリングの段階で、いかにクライアントの要望を正確にくみ取るかがポイントになります。まずは、映像制作の目的は何なのかということを明確にします。例えばそれは"集客"なのか、"ブランディング"なのか、その場で購買につなげたいのか、あるいはリピーターを作りたいのか。それによって表現方法もニュアンスも違ってきます」

クライアントと共に話し合いながらプロとしての提案を繰り返すことで、常に“効果”というものを意識した映像を作っていく。そんなスタイルで仕事をする映像作家は、業界内を見渡してもまだまだ少ない状況なのだそうです。

「数多くの経営セミナーやマーケティングセミナーの映像制作に関わっていくうちにコンサルティングのノウハウが、自分の中に確実に蓄積されていきました。効果が生まれた手法を応用しながら実際に映像化し、さらに効果を測定しながら分析を繰り返し、独自の映像制作のメソッドのようなものが構築されてきたのです」

しかも必要であればプロデュースからシナリオ制作、現場におけるディレクションや演出、撮影、そしてBGM制作、編集まで、映像制作におけるすべてのスキームを一人で対応するというので驚きです。

「多くの人間が制作に関わることで、往々にしてお客様の意図するところからどんどん離れていってしまうものです。ニュアンスが変わってしまうことは致命的ともいえるので、それを避けるために一気通貫で対応。クライアントの意図を反映しつつも、しっかり結果を出すことにこだわり続けてきたことで、これまで多くのお客様との信頼関係を構築することができました」

突然にグラーツ行きの話が舞い込んできた

近年では、作品制作のみならず執筆活動や講師として、映像技術の水平展開にも注力。ソフトウェアの操作法など、映像制作に関わるあらゆるノウハウを、実際の講義やeラーニングというカタチで提供してきた大須賀さん。その課程において、“とても奇妙なオファー”が舞い込んできたのだといいます。

「どうやらオーストリアの本社を置く会社でありながら担当者はアメリカ人で、しかも、やたら上手な日本語によるメールがいきなり送信されてきたのですね、“アナタはオーストリアに行って収録する意志はありますか?”みたいな。最初は新手の詐欺かなとも思ったのですが(笑)、スカイプで話を聞いてみるとどうやら、ある世界的なサイトの日本版コンテンツを準備しているというのです」

確かに、不確定で不安な要素もないわけではなかったのですが、“航空券も用意してくれる”と言うし、ここまで手の込んだ詐欺もないだろうと。そしてまずは不安より何よりも、好奇心の方が先に立ち、何の躊躇もなくオファーを受け入れたのだと言います。

「どうやら色々な日本人クリエイターに話を持ち掛けていたらしいのですが、最初のコンタクトの時点では、まだウェブサイトも存在していなかったし、何よりも怪しかったし(笑)。後にオファーを受けた人同士が知り合ってみたら、実は好奇心旺盛な一線のクリエイターばかりだったんですよね」

それまで、海外と言えば、新婚旅行で訪れたサイパンくらいなもの。そんな大須賀さんが2週間に渡ってオーストリア第二の都市であるグラーツに滞在することになりました。

「その街では、私に声をかけてくれた例のアメリカ人と、何人かの日本人スタッフ以外に“日本語を使う人がいないんじゃないか?”というような状況。滞在期間中、実際に街で日本語を耳にしたのも、たった一度くらいなものでした」

グラーツでの仕事は、一日中個室のスタジオにこもっての収録作業。“これって、別にオーストリアでなくてもいいのでは(笑)?”とも思ったと言いますが、とにかく初めての海外長期滞在は大変刺激的なものだったといいます。

「収録作業が終了した後や休日には、ひとりで街をぶらつきました。グラーツは街全体が世界遺産になっている魅力的な場所。映像作家の癖なのかもしれませんが、どうしてもアングルを変えて街をみてみようとしてしまいます。例えばズームインするとマクドナルドもあるし、H&Mもある。ところが逆に引いて見てみると、中世の街の姿がそのまま残されているんですよね」

旅行前には、必ずグーグルの航空写真を見て、ウィキペディアに目を通すという大須賀さん。その理由も映像作家独自の視点といえます。

「航空写真で見ると、明らかにそこだけ、他の部分と色が違う場所がある。寄ってみると、なまこのオバケみたいなシルエットがあって、これ何だろう?って、すぐに好奇心が動いてしまいます。地図を見ていると、どうしても文字情報を先に追ってしまうけれど、視覚的に違和感を覚えると、“何かおかしい?”って、感覚のセンサーみたいなものが働いて、自然にその場所へ足を踏み入れてみたいと、本能的に思ってしまうところがあります」

さらにウィキペディアでは、その街の成り立ちや歴史について下調べをするといいます。

「街が持つ“ストーリー”に興味があるのです。これは日本国内においても、今まで足を踏み入れたことのない未知の場所へと行くときには、必ずそうしているのですが、その街で何が起こって、そして、どのような経緯をたどって現在のようなカタチになったのか。そのストーリーと僕が繋がる瞬間がたまらなく好きなのです」

大須賀さんの仕事が評価され、それ以来、頻繁にグラーツへと通うようになったのだとか。多い時には年に2、3回、トータル一ヶ月以上はその街に滞在しているため、今では日本に次ぐ第二の拠点のような感覚になっているといいます。

「現地ではホテルのほか、会社借り上げのシェアハウスに滞在することもあり、そこに世界中のトレーナーやエンジニアが集まって、ちょっとした共同生活を送るようになりました。ある時、スペイン人の技術者が家族を連れて滞在。小さな娘さんが二人いたのですが、僕の英語のレベルが彼女たちとほぼ一緒だったこともあってか、とてもスムーズにコミュニケーションがとれまして(笑)。一緒に日本製のゲーム機で遊んだり、旦那さんが遅いときには奥さんとワインを飲んですごしたりと、普通では得難い貴重な経験を重ねましたね」

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台湾の街の変化を見届けていきたい

そんな大須賀さんが現在、強く惹かれて止まないのが台湾なのだといいます。 「TVや写真を通じて見る限り、台湾の街の作りに既視感みたいなものを覚えます。まるで昔の日本の街を見ているような感覚というか。たぶんこのまま近代化が進んでいくと、いつかこの街並みを見ることができなくなってしまうかもしれません。そう思うといてもたってもいられなくなります」

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とにかく街が変化していく課程、すなわち時系列で進んでいくストーリーを追いかけ、この目で見届けていきたいのだといいます。

「旅って結局、様々な場所や人たちと自分の人生の間のつながりを作ったり、確かめにいったりする機会だと思うのです。そこに接点をおくことで、街のストーリーの中に自分の役割が生まれるような気がします」

だからこそ、しっかりこの目で逃さず、あらゆるシーンを捉えたい。

「初めて行く場所において人間は、ものすごいスピードで、ものすごい量の情報を自分の脳の中に取り入れようとします。だから2回目の訪問では哀しいかな、すでに固定観念が生まれてしまい、最初の訪問のような鮮烈な感動は生まれづらくなります。だからこそ、二度とは得られないものを逃さぬよう、あらゆるアングルで街を、そして、そこに住む人々を見て、切り取りたいと思うのです」

大須賀さんにとっての旅とは、映像の中で華麗に流れるストーリーを生むために必須の刺激なのかも知れません。

大須賀淳さん https://www.facebook.com/jun.oosuga/ http://studionekoyanagi.jp/

インタビュアー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション

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