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プロフェッショナルの感性を刺激する旅Vol.20~版画家・西脇光重さんのアリゾナ

プロフェッショナルの感性を刺激する旅先と、その思い出をお聞きするインタビューコンテンツ。今回は、版画家の西脇光重さんに、お仕事への思いや、アメリカ留学時代のお話を伺います。

版画家である西脇光重さんが活躍するフィールドは実に幅広い。自らが手掛けるエッチングデザインが、出版物の装丁画や国内外アパレルブランドのTシャツ、ワンピースなどを飾り、時にはインテリア雑貨アクセサリーにもなっています。もちろん作品自体、企業のロビーはもちろん、遠く海外のデザイン事務所や建築事務所にも飾られている。それらはすべて、西脇さん自らが直接売り込んだ“点”から、“面”へと広がっていったのだといいます。

「アパレルメーカーのロビーに飾られていた私の作品を見たデザイナーから問い合わせがあって、新たな仕事が生まれたという実例があります。とにかく、人の目に触れることが重要だと思っています。そこからどのような広がりが生まれるかわかりませんから」

最近はシアトルニューヨークボストンと立て続けに、ギャラリー展示の機会を得ているという西脇さん。これらすべて、自らがメールや作品サンプルの手紙、見本市出展等で作品を売り込み、先方が興味を持つことで生まれた結果なのだとか。

「3年前からロンドンパリでの個展、パリ、ニューヨークでの商業見本市に作品出展。ギャラリーもロビーやカフェと同じで多くの人に作品をご覧頂き、人と出会うことで機会が発生する場所と思います」

アーティストでありながら、営業的な素養をも持ち合わせている西脇さん。その感覚は、版画家として身を立てる以前のキャリアの中で培ってきたといいます。

「版画家になる以前は素材メーカーに勤務して海外営業に従事していました。新規市場開拓のため、当時はまだインターネット社会ではありませんでしたので、電話やファックスによる営業活動を実施。ヨーロッパ各国を訪問していました。また当時、仕事の合間に美術館やギャラリーを見て回ったり、好みの海外の包装紙や切符などを集めるのが好きだったりで、今思えば、その時代に得てきた海外でのインスピレーションが、今の作品のベースとなっているのかもしれません」

サラリーマン生活に終止符を打ったのち、誰かに師事したり、修行生活を送ることなく、ほぼ独学で版画家としてデビューを果たした西脇さんは、学校や師匠から学ぶことができない「経験」が、今の自分を支えているといいます。

「人の心に指さる版画を作成するためには、制作技術だけではなく作品から何か楽しんで頂けるユーモアセンスが必要だと思います。例えば、巨匠の作品を美術館で見て、自分の心に印象に残らなくても、その帰り道に寄ったカフェの壁にかかる無名の作家が描いた絵が心に刺さることがある。私は、その時に感じたインスピレーションを作品にしようとしているだけに過ぎないのです」

さらに西脇さんは言葉を繋いでいきます。

「もちろん、自分の版画作品がすべての人の心に刺さるとは思ってはいません。私の作品を楽しんでくださる方が100人中1人でもいればいいと思います。作品を楽しんで頂ける方を一人でも多く見つけようと、今、それを広げようとしているわけですよね。その手段は企業との仕事やギャラリーだったりして、それらはすべて、人との出会いの場だと捉えます。しかも、表現の場は無限大にある。版画作品は言葉の壁を超えることができるので、まだまだ可能性があると思っています」

アリゾナの美術館でわかったこと

西脇さんは、29歳で会社を辞めたときに、新しい人生を切り開こうとアメリカ留学を決意。向かった先はアリゾナ州にあるデザインの専門学校でした。

「学費や生活費も安く、日本人も少ないという理由もあって、思い切って、無試験で入学できるアリゾナの学校に留学しました。無試験の学校でしたが、授業は厳しく、先生方は素晴らしく、多くの友人も出来ました。アリゾナで一年半暮らし、卒業後はブルックリンとパークアベニューの広告会社にインターンとして入ったので、ニューヨークで1年半ほど生活しました。計3年間のアメリカ生活の間に、各主要都市をグレーハウンドバスなどを利用して周りましたね」

印象に残っているのは、専門学校生時代にプログラムの一環としてアリゾナの美術館で名画を鑑賞していた時のこと。

「名画を鑑賞しながら感想を書くという課題があったのですが、私のアメリカ人の友人が中世貴族の肖像画を見ながら“このおっさん、太っているから嫌いだ”と書いていたのですよ。それを読んで、まさに目から鱗。写真のような肖像画ではありましたが、心に刺さらない、確かにそう見える。そこからアートの見方が変わりましたよね。権威とか肩書とか、“すごい!”っていうキャッチコピーに引っ張られずに、本音で感想を語る。大切なのは、自分の基準なんだと」

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仕事で得る感動を追い求めて

そんな西脇さんが今惹かれているのはロンドン、ニューヨーク、パリと自らが仕事の拠点と捉える都市ばかり。

「100万円あげるからハワイ観光に行ってもいいよといわれても絶対にいきません(笑)。そこには仕事の感動がないから」

サラリーマン時代にドイツの大手企業との契約を勝ち取った際の感動が忘れられない。それは、海外で”評価された”最初の感動だといいます。

「観光はいわば、これがおいしい、これが綺麗、と一方的に感動を享受するに過ぎませんが、評価される感動とはまったく質が違うと思います。ドイツにおける成約後の帰路、列車の乗り換え時間にシュツットガルト駅のバーで飲んだビールの味が今でも忘れられない。そういった感動を覚えてしまった以上、観光だけでは物足りなくなっている気がします。現在は版画家として自ら制作した版画を”評価して頂く”ことが仕事で、サラリーマン時代と変わりません。ただ企画、制作、営業、経理、法務など全てを自分一人でこなす点で異なるだけです」

西脇さんにとっての旅。それは、仕事で評価される感動、そして自らの作品に心が刺さる人を追い求め続ける行為といえそうです。

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西脇光重さん 作品はサイトにてご覧ください。 http://mnetching.art.coocan.jp/

インタビュアー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション

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