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フォトグラファー・木内和美さんが見たインド

プロフェッショナルの感性を刺激する旅先と、その思い出をお聞きするインタビューシリーズ第27回。今回は、フォトグラファー木内和美さんに、お仕事に対する思いやインドでの体験について伺います。

女流フォトグラファーの木内和美さんは、ポートレート、ファッション、建築など、幅広い分野で活躍しています。

「何か特定のジャンルを専門としているわけではなく、ありがたいことに最近は、私の作風を気に入ってくださるお客様からのオーダーが増えています」

共感を生むポイントは一概に言葉では言い表せません。どんなものを美しく感じるのか、その基準が近い人と共有できるものだといいます。

「感性は育っていくものだと思いますし、表現手法もさまざまありますが、自分の根底にある、『これは嫌だ』『これは美しくない』という“嫌いな部分”は何年たっても変わりません。その“嫌いな部分”を排除する美意識みたいなものに、私らしさを感じてくださるお客様がいらっしゃるのがありがたい」

「ポートレート撮影で意識するのはリフレクション。被写体との関係性構築が大切だと考えています。ただ美しいライティングを施して綺麗な写真を撮っても、それがなければ、“この写真から何か感じられる?”で終わってしまう。だから常に、良い写真って何?って自問自答していますし、いくつになってもその答えは見つからない」

下積み生活が長いのも、そのストイックなまでに“こだわる”性格に起因。答えが出ないものを求めるのに、一切手を抜くことができないからなのでしょう。

「進学校から医療系の大学に進んだけれども、興味が持てずわずか2年で辞めてしまいました。そんな時期にカメラと出会いました」

これまでの人生において、途中で何かをあきらめたことはなかったという木内さん。

「大学を途中でやめたこと、自分で決めたことを全うしなかったのは非常に不本意ではありました。だから、写真も趣味ではできない、徹底的にやりたいと。写真の専門学校を経て、東京のスタジオで就職することを決めたのは、写真を仕事にするためには、どういう力が必要なのかを見極めたかったからです」

スタジオではセットを組んだり、カメラマンやモデルたちのお弁当を用意したり、様々な仕事に従事。シャッターを切ることはなかったが、多くのプロたちの撮影を見て、吸収できるものはすべて吸収していったといいます。

「でも、もっとその先にある仕事全体のプロセスについても知りたくなりました。そこで、今度は写真家の先生のアシスタントになろうと思ったのです。私が働いていたスタジオを利用している方で、ものすごくかっこいい写真を撮る先生がいて、半ば強引にロケアシスタントとして採用してもらったのです」

撮影準備からスタジオセットの指示出し、暗室作業や写真のチェックまで、ありとあらゆる業務をこなしました。スタジオ勤務時代よりもさらに忙しい日々の中、とにかく、目の前の仕事をこなすのに必死だったといいます。

そして6年後、30歳を過ぎたときに、ふとしたきっかけで、写真家の事務所を離れることになります。

「でも、良いタイミングだったと思います。先生もずっと、このままではいけないと思ってくださっていましたし、あのまま残っていたら、きっとこうしてフォトグラファーになれていなかったと思います」

アシスタント業に注力していたため、作品のストックもなく営業活動もままならない。独立当初はアルバイトをしながら生活を支えた時期もあったといいます。それでもアシスタント時代に、その仕事ぶりを見ていてくれた人たちがたくさんいて、やがて声をかけてくれるようになったのだとか。木内さんのその不器用な生き方を愛し、ぶれない美の感性に共感する人から声が掛かり、仕事が広がっていったのでしょう。

「同じものを見て美しいと感じる方との縁は大切にしてきました。そこから確実に世界が広がっていったのです」

インドで考えたこと

アシスタント時代に、様々なプライスレスな経験を重ねてきたという木内さん。写真家の先生に同行して仕事=旅を重ねていきました。

「最初のロケはバリ島でしたし、アリゾナのセドナではパワースポットを訪問しました。でも、個人的に印象に残っているのはインド。それはある作家がダライラマに謁見するというツアーに同行したときのことです」

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デリーから10時間ほどかけて北上し、ダラムサラという街へ訪れたといいます。

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「バスもあったのですが、シャフトが折れるなど、ありえない事故が多発していたので、ハイエースをチャーターしてロングドライブで向かいました。北に行くほど、アジア色が強くなって、食文化もカレーだけでなく、ヌードルが主食だったりと、新しい発見がありましたね」

ダライラマに会うという経験もさることながら、ダライラマの妹が運営する孤児院にも訪問。子どもたちの幸福そうな笑顔にも触れたことが印象に残っているといいます。

「力強く生きているというより、優しく生きているなって、温かいものを感じました。片やデリーの高級ホテルでは、ものすごいお金持ちが豪華な食事をしている。空港には物乞いをしている人がいる。色々な環境や状況で生きている人が幅広いレンジで存在していて、それぞれの生活を営んでいることを改めて実感しました」

インドのケララ州にも訪問。ホテルの外に広がる海岸線を歩くと粗末な家に暮らす人や、教会で祈る人の姿を見たときに、木内さんの目には決してそれが“不幸そう”に映らなかったといいます。

「様々なカタチの人の営みがある。どんな状況にあっても幸せそうに生きている人がいる。自分が知っている世界ってあまりにも狭いって思いました。色々な生き方がある、色々なものの見方、感じ方がある。果たして本当に自分は幸せなのか?そもそも幸せって何なのかって考えてしまいましたね」

旅の目的がシンプルになっていく

年齢を重ねてくると、どんどん旅の目的がシンプルになってくるという木内さん。

「北海道に行って、彫刻家イサム・ノグチがデザインしたモエレ沼公園だけを見たい!とか、福岡では有明海の干潟が見たい!とか。あれもこれも見たいって欲張らなくなりましたね。美術館でもそう。この絵が見たい!って、目的の絵だけを見て、その余韻を深く味わう。そんな感覚になっています」

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目的がシンプルなほど、楽しみの純度が高くなる。それは、現在、木内さんが毎朝欠かさずに取り組んでいるランニング途中の道の写真撮影をはじめてから気が付いたのだといいます。

「毎朝、iPhoneで道の写真を撮影し、一点だけインスタグラムにアップしているのですが、たくさん見せるより厳選された一枚の方が強いと思いまして。まあ、元々、私自身が、あれこれ手広く器用にこなすタイプではなく、これしかない!という性格なので(笑)」

木内さんにとっての旅とは、多様なものの中から一つだけ、大切なものを抽出する目を養う、そんな機会なのかもしれません。

木内和美さん https://www.facebook.com/kkiuchikazumi https://www.instagram.com/kkiuchikazumi/ https://twitter.com/kkiuchikazumi

インタビュアー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション

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