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【インタビュー】世界を旅したノンフィクション作家が考える旅と仕事

プロフェッショナルの感性を刺激する旅先と、その思い出をお聞きするインタビューコンテンツ。最終回となる今回は、ノンフィクション作家・中村安希さんに、お仕事に対する思いや世界旅行の思い出について伺います。

ノンフィクション作家として、いくつもの作品を世に送り出し続けている中村安希さん。

「ノンフィクションとは何か?それは文字通り、フィクションでないもの全般を指します。例えば、政治ものやスポーツ、サイエンスなどすべてがノンフィクションというジャンルに含まれます。もちろん、それぞれの分野の専門家も出版をされますが、私はあくまで作家業なので、自分なりに社会のテーマを見つけて執筆するのが仕事だと思っています」と語ります。

中村さんの場合、特定の得意ジャンルは持たずに、自分の身近なところから話がスタートして、それを追いかけながらテーマを固めていくのだといいます。

「例えば、最新刊の『N女の研究(フィルムアート社)』は、NPOなどのソーシャルセクターで働く女性たちへのインタビューを集めたものですが、実は私の友人が転職したことがきっかけとなって興味を持ちました。元々、シリコンバレーの大手ソフトウェア会社でバリバリ働いていた彼女が、大幅に年収を下げて非営利セクターに転職した。しかも周りに目をやるとそういった女性が増えている。なぜ?どうして?という疑問から実態が知りたくなり、調査を重ねていきました」

NPOの代表や、NPOを研究している学者さんの本はたくさん出版されていますが、それはあくまで専門家の本であり、NPO側の発信であると中村さんは指摘。業界の人たちが専門的なことを知りたくて手に取るような本を作りたいのではないといいます。

「その業界に属さない人たちに、その世界を知ってもらう、あるいはその人たちの活動を通じて、例えば“難民問題ってあるよね”と気が付くような、違う入り口を用意する。最初から“難民は今、こうなっていますよ”とデータを示しながら教える仕事ではないのです」

いつもそのジャンルの本を読んでいる人ではない層に伝えたいことがある。だから、これまで繰り返されてきた、同じような思考パターンや書き方に収めたくはないのだといいます。

「NPOだったらかわいそうな人がいて、それを救うために立ち上がって苦労があった、みたいな、そういったステレオタイプのパターンからは外れているようなケースを発見して、“世の中ではこう見られているけれど、そうじゃないケースもあるよね”と示していくと、パターン化されたものに辟易していた人たちがちょっと読みたくなって、そして新たな発見が生まれる。そういった作品を目指しています」

世界中を旅して考えた報道のあり方

はじめての世界旅行を敢行したのは中村さんが26歳の時。アメリカの大学で演劇を学んでいたため、世界中の伝統舞踊や文化人類学に興味を持ち、いつかチャンスがあったら世界中を見て回りたいと思っていたのだといいます。大学を卒業して、数年ほど働いて旅行資金をためた中村さんは、長い旅に出ようと決意します。

「きちんと勤めている人、ちゃんとした社会人に対するリスペクトがあるので、“永遠のモラトリアム”のようにダラダラと旅を続けるつもりはありませんでした。旅を終えたらきちんと社会復帰を果たしたいと思っていましたし、日本の雇用環境を考えたら、そんなに度々転職もできないし、簡単に長いバケーションはとれない。行くなら一気に行ってしまおうと考えました」

目的地は西の果て、ポルトガルのロカに定めて、道中にどんな国を挟むかは決めることなく旅を始めたという中村さん。期間も定めず、手持ちの資金が尽きるところまで続けようと考えたのだといいます。

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「日本から韓国モンゴル中国、チベットまですすみ、ヒッチハイクで山を越えて姉が住むネパールに入りました。そこから東南アジアに戻って各国を周り、ミャンマー、インド、パキスタン、そして中央アジアへ。イランに南下してトルコ、シリア、ヨルダン、イスラエルと中東を巡り、イエメンから木造の貨物船に潜り込んで紅海を渡ってアフリカ大陸に入りました。アフリカ各国を回ってからヨーロッパへ入り、結局、23ヶ月間の旅を続けて、目的地へとたどり着きました」

撮影:中村安希

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旅の中で得たものはたくさんあった。大きかったのは、それまで自分の中にあった既成概念がことごとく覆されたことだと言います。

「イスラム諸国のイメージが大きく変わりました。報道を通じ、我々にはイスラムは危険だというイメージが植え付けられている。ところが実際に現地に行ってみると、イスラムの戒律は人が平和に暮らせるようにデザインがされているものだとわかる。人を大切にしましょうとか、そういうものを忠実に守ろうとしている人は本当に親切で奉仕の精神を持っていました。欧米の価値観では危険視されていますが、自分は逆だと思ったのですね。アフリカもそう。決してかわいそうな大陸なんかじゃない。ものすごくパワフルだし能力も高い人が多い。ただ、世界的に正しいとされている欧米のシステムが押しつけられ、不利なルールの中で戦わなくてはいけない状況にあるだけです」

撮影:中村安希

そんな経験を通じて、パターン化された報道に疑問を持つようになったという中村さん。「もっと違う世界の側面を伝えたい、それがノンフィクション作家になった原点です」

旅=仕事という感覚

現在は香港に在住。大学院でジャーナリズムについて学びながら、精力的に出版活動を続けています。

「世界は動いています。政府とジャーナリストの関係性や報道のあり方も変わってきている。この先、ジャーナリズムがどうなっていくのか、それを探っていきたいと考えています」

世界中を駆け回ってきた中村さんですが、なぜか南米地域だけがすっかり抜けているのだとか。しかし、ただ単に旅を楽しむとは考えていないのだといいます。

「旅=仕事という感覚です。続くと疲れるし、もう行きたくないと思うこともあります。ぶらぶら観光してまわるのも大変(笑)。グルメなんてどうでもいいし、世界遺産も見過ぎるとただの石だし、滝も見過ぎるとただの水。それよりもまっすぐテーマに向かっていったほうが燃えますね」

現在、中村さんの興味の対象はロヒンギャ難民の動向なのだとか。先日はバングラデシュの難民キャンプまでヒッチハイクをしながらたどり着き、取材を敢行したのだといいます。

「近々、マレーシアに行く予定ですが、けっしてマレーシアに行きたいのではなく、マレーシアに来ている難民に興味があるのです」

中村さんの情熱の炎が燃え尽きることがない限り、彼女の旅は永遠に続いて行くに違いありません。

中村安希さん http://akinakamura.net/

インタビュアー:伊藤秋廣エーアイプロダクション

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