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プロフェッショナルの感性を刺激する旅Vol.4~フォトグラファー・古宮こうきさんのニューヨーク

プロフェッショナルの感性を刺激する旅先と、その思い出をお聞きするインタビューコンテンツ。今回は、フォトグラファーの古宮こうきさんに、お仕事に対する“思い”や、人生を変えた旅の思い出について話を伺います。

フォトグラファーの古宮こうきさんが得意とするのは人物撮影、いわゆる“ポートレート”。現在は、タレントや文化人、アスリートなど様々な被写体が見せる一瞬の表情を切り取って、雑誌やウェブなどの媒体でアウトプットしています。そんな古宮さんが撮影を行ううえで信条とする基本姿勢は“謙虚”であること。謙虚であるか否かで、人物写真のクオリティは大きく変わるのだと言います。

「被写体が存在しなければ成立しない仕事です。だからこそ相手に対して最大限の敬意を払うべき。そして、できることなら、その人が写りたい表情で、その人が落ち着ける場所で静かに撮影したい。そこに写真家の勝手な思い込みや作為的な要素など、まったく入り込む余地はないと思うのです」

あくまで“普通の写真”にこだわりたいという古宮さんは、さらに言葉を繋いでいきます。

「“光を読む”など基本テクニックは必要ですが、構図や表情、切り取り方など写真家の利己的な思いが加わると、どうしてもそちらに引っ張られてしまい、不特定多数の人にその写真を見てもらっても、入り込めないような気がします。なんでもない“普通の写真”の方が、誰にとってもその場に没入できる奥行きや既視感が生まれると僕は思うのです」

被写体らしさが表現されていない写真はポートレートとは呼べない。その人“らしさ”を引き出すために、その人に対して肯定的な心で写真を撮る。そうすれば、おのずととても自然な表情を切り取ることができるというのです。

そんなこだわりを持つ古宮さんが、フォトグラファーという職業を選んだのも、“旅が好きだったから”に他ならないと言い切ります。

「サラリーマンだった僕は、毎日同じ時間に同じ場所に通って同じ机に座って同じ人と会話することが苦痛で苦痛でしかたがなかったのです。よくよく考えてみると、僕ってひとりで空間を移動しているときにすごく癒され、心が満たされていると。ならばそういったライフスタイルで生きていける仕事って何?というところから、僕の脱サラがはじまったのです」

そもそも写真との出会いも旅がきっかけとなったという古宮さん。しかもそれは自らの意識の外からやってきたのだとか。

「元々、音楽をやっていたのでミュージシャンを目指そうと高校を卒業してからアルバイトでお金を貯め、単身アメリカに渡りました。ツテもアテも何もなかったんですけれど、ギター一本抱えて、計画と言えば、“ブルースの本場であるシカゴに渡ろう”という思いだけ。向こうの空港に着いてからはじめて、“あ、俺英語しゃべれないじゃん”って気づくような始末でしたから(笑)」

アメリカに旅立つことを家族に告知したのは出発の1週間前。家族は驚いていたものの、誰一人として古宮さんを止める人はいなかったのだとか。

「その時に姉が、“あんた、観光に行くんだからカメラぐらい持って行ったら”って、餞別にくれたのが小さなコンパクトデジタルカメラだったんです。それまで、ほとんどカメラなんていじったことすらなかったのですが、確かにそう何度も経験できるものではないだろうから、記録として必要だなとバックパックの中に押し込みました」

ニューヨークへの単独渡航が人生を変えた

地下鉄の通路や小さなクラブなどギターが弾ける場所を求めながらシカゴからニューヨークへ移動。気ままな演奏旅行を続けたのだといいます。

「ニューヨークで日本人のカメラマンと知り合いになりました。彼はアメリカ一周旅行の途中だったので、数日間を異国の街でともに過ごしたのですが、彼の話を聞いているうちに“写真って、面白そうだな”って思ったんです。“そういえば、姉ちゃんからカメラもらったな”って思い出し、見よう見まねで撮影を始めました」

刺激的なニューヨーク生活。目に付くあらゆるものを被写体にしてシャッターを切ったという古宮さん。撮影が面白くて面白くて仕方がなかったといいます。そして決定的な一枚を写真に収めることとなります。

「クラブでブルースの神様であるB.B.キングを見に行こうと思ったのです。当時の彼はちょうど80歳を超えたばかりでしたが、まだまだ精力的にステージをこなしていました。一人で観に行った僕は当然、店の端っこのカウンター席に通されます。でも、よく見れば最前列の4人掛けのテーブル席に3人のご婦人方が陣取っていて、ひとつ席が空いている。つたない英語で必死に伝えましたね。“僕は日本からこれを見るためにやってきたのだ。だから、あの席に座りたい”とね」

熱意が通じたのか、ステージの目の前の席に通された古宮さんは、演奏が始まった途端に魅了され、“この光景を写真に収めたいという”衝動に支配されるようになります。

「撮っちゃまずいかな? いや、これは撮るだろう?と自問自答しながら、目の前のB.B.キングにカメラを向けていました。実は日本とは違って、その辺はすごくアバウト。演奏中のB.B.キングも、“Welcome”な表情を向けてくれたような気がしました」

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3か月間に渡るアメリカでの演奏旅行で手応えを感じた古宮さんは帰国後、さらなる経験を重ねるため、今度はロックの本場であるロンドンへと向かいます。ところが、新たな旅は少々感触が違っていたようでした。

「ロンドンでは何もかもうまく行きませんでした(笑)。ニューヨークと比べて街も人も冷たく感じたのです。そこで気がつきました。ニューヨークの人たちは外からやってきた人間に優しいのかなと。日本からやってきた僕に『Hey, Japanese boy!』って気さくに声をかけてくれて、演奏の場を与えてくれて、そしてチップまでくれた。決して音楽の実力だけで楽しい演奏旅行を送れたわけではなかったのではないか。国民性の違いを目の当たりにしたのと同時に、とてつもない寂しさというか、無力感を覚えてしまったのでしょう。そこでもう音楽はやめようと思ってしまったのです」

3ヶ月間のロンドン滞在を終えて、早々に帰国した古宮さんは、“真面目に普通に生きよう”と決心。しかし、全く社会経験のない自分に何ができる?そのときにふとカメラを扱う楽しさを思い出したのだといいます。

「カメラマンを募集している製作会社に入社したのですが、なぜか企画部門に配属。クリエイターにお願いする立場として広告制作に携わることになりました。でも、そこで4年間を過ごし、どうしてもまた旅をしたくなって…。先ほどの脱サラを決心したという話に戻るのです(笑)」

旅をするように暮らすために、フリーランスのカメラマンになろう。まずはアメリカで知り合ったフォトグラファーに連絡を取って、最低限の指導を受けたのちに独立を果たしたのだといいます。

「結局、僕の過去の経験が線のようにつながって、カタチとして現れたのです。こういうことって、後になってわかることですが、その時には、それほど重大なことだったなんて気づいてもいません。今29歳になって、ひとつひとつの経験とか出会いが大切なんだってことを実感しています。どこか知らない場所に旅して体験したり、人と話して繋がることがどれだけ大切かって」

大人になった今こそロンドンでリベンジ

そんな古宮さんが現在、興味を持っている旅行先はロンドン。あの時に挫折感を感じた街でリベンジを果たしたいのだと言います。

「あのころに比べて大人になったし、少しは英語も通じるようになりました。結局、ロンドンは、20歳前後の子どもが楽しめる場所ではなかったのですよ(笑)。物価も高くて、ポンドも今の1.7倍くらい?マクドナルドで食事しても普通に1000円くらい払っていましたからね。周囲のみんなはパブで旨そうにビールとか飲んでいるわけですよ。これはリベンジするしかないでしょう?」

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古宮さんにとって旅とは一体どういうものなのだろう?

「旅は好奇心を満たし、そして自分の心と身体の新陳代謝を促してくれるものです。僕自身、常に新鮮でありたいし、一緒に仕事をしている人に、いつも驚きを与えられるような、奥行きのある人間でありたいと思っています。3年間くらい付き合ったらもう、“あいつはつまらないヤツだ”なんて思われるような人間じゃ仕方がないですからね。それに被写体に対しても失礼ですよ。だって煮詰まってフラストレーションが溜まっているようなカメラマンになんて撮影されたくないでしょう?」

旅は古宮さんにとって、常に面白い人間でいるためのスパイスなのかもしれません。

古宮こうきさん http://www.kkphotograph.com/ https://www.facebook.com/profile.php?id=100011385331990

インタビュアー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション

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