スタイリストとして、36年間のキャリアを重ねてきた澤木祐子さん。これまでにTV番組やCM、雑誌、舞台などに登場する数多くのタレント、俳優、モデル、スポーツ選手、文化人のファッション・コーディネートを担当してきました。
「単純にその方の持ち味を引き出すだけではなく、目的や媒体にあわせた提案が必要となります。例えばCMならば、商品がメインとなるよう作り込んでいきますし、同じTVでも、バラエティ、あるいは歌番組、ニュースなどシチュエーションによって着るものが変わってきます。本人の個性に加え、鑑賞する側の人が持つであろう印象まで計算に入れたうえで組み立てていきます」
星の数ほど存在するファッションアイテムの中から、様々な条件を満足させるものをセレクトして提案するためには、その“提案力”の根拠となる“引き出しの数”が重要になるのだとか。
「常にコレクションや展示会場、ショップなどに足を運び、ファッションの最前線で今、何が起こっているのか?をチェック。キャリアのうえにあぐらをかくのではなく、日常的に学ぶ姿勢が必要だと思っています」
さらに、ファッションの愉しみや、装いの変化による心理効果などを広く一般の方々にも広めたいとの思いから、“パーソナルスタイリスト”として活躍の場を拡大。近年のセルフブランディング熱の高まりを受け、企業経営者など、“人前に立つ職業”の方から、ファッションに興味がある職業女性や主婦まで、各方面から引っ張りだこなのだといいます。
「“似合う、似合わない”は、体形分類や色彩など、ロジカルに積み上げるもの。そこに相手の“好き、嫌い”といった感性の部分を加味してご提案するのがスタイリストの仕事だと思っています」

はじめてのパリで感じた“選ぶ”楽しさ
そんな澤木祐子さんが、大きく刺激を受けた旅先はフランス・パリ。20代の頃に、CMの仕事で、ある有名モデルに随行し、はじめてその地に足を踏み入れた時の鮮烈な体験が忘れられないといいます。
「一般の方が住んでいるアパートメントで撮影したのですが、その部屋はアクセサリーが壁一面に、まるでディスプレイのように配置され、洋服はトルソーに着せてあり、キッチンツールも、今でいう“見せる収納”の状態になっていたのですね。当時の日本では、大切なものは、しっかり押入れの奥にしまってあるような時代でしたから、非常に衝撃を受けました」
そこで澤木さんは、自分がセレクトした、大好きなものに囲まれている生活の心地よさを感じたのと同時に、改めて“選ぶ”ことの重要性を実感したといいます。
「それまでは、あまり意識せずに、自分の癖や潜在意識に任せるがままに選んでいたので、一定の枠から抜け出せていなかったと気が付きました」
しかも、当時の日本はといえば、雑誌に紹介されたコーディネートをそのまま流用したり、そもそもアイテムも少なかったこともあって、ファッションも画一化されていたといいます。
「みんな違っていいんだって気が付きましたし、しっかり選べば、それが自己表現に繋がるのだと感じましたね」

さらに、パリの街の中に見られる、“古き良きものを大切にする姿勢”にも共感を覚えたのだとか。20代の時に、それを実感したことが、その後のスタイリスト人生に大きな影響を及ぼしたのだといいます。
「ファッションはカルチャーである以上、その時代を語るものであることは間違いありません。でも、確かにトレンドを取り入れるのも必要ですが、そればかりになると“服に着られている”ように見えてしまう恐れがあります。昔からあった“大切なモノ”と今のトレンドを上手にミックスすることで“マイスタイル”が生まれると思っています」
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“多色づかい”の源流に迫る旅
澤木さんが現在、興味を持っているのがインド。ヨガを通じて知った、その多色使いの文化に魅かれているといいます。
「今年はストライプとチェックを合せたりする“タッキーファッション”がトレンドになっていて、結局、その源流はアフリカやインドにあると思っているのですね。多色づかいでも綺麗に見える曼荼羅を生み出した場所に、実際に足を運んで、その文化に触れてみたいと思っています」
常に探究心を捨てずに、自己を高める努力を惜しまない澤木さんにとって、旅は欠かすことのできない原動力になっていることは間違いなさそうです。
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澤木祐子さんhttp://stylingcounselor.com/https://www.facebook.com/ysawaki
インタビュアー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション)