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プロフェッショナルの感性を刺激する旅Vol.9~出張料理人・(食)ソウダルアさんの瀬戸内・女木島

プロフェッショナルの感性を刺激する旅先と、その思い出をお聞きするインタビューコンテンツ。今回は、現在開催中の[瀬戸内国際芸術祭](https://www.skyscanner.jp/news/setouchi-artfestival-2016)の公式レストランで腕を振るう出張料理人・(食)ソウダルアさんに、自らの仕事に対する思いや、瀬戸内に浮かぶ女木島の魅力についてお話を伺います。

名刺に「(食)ソウダルア」と表記し、(株)=マエカブならぬ、“マエショク ソウダルア”と読ませる、そんな独創的な発想を持ちながら、出張料理人として幅広いフィールドで活躍するソウダルアさん。個人宅に訪問したり、パーティの場に呼ばれたり、あるいは音楽家のライブやギャラリーのオープニングレセプションなどの場で振る舞われるメニューを監修し、自ら腕を振るうのだといいます。

「メニュー作りはまず、呼んでくださったお客様の親友やファン、あるいは恋人のような気持ちになるところからはじめます。音楽家であれば、彼が作ったすべての音源を聴いてファンになり、“彼のライブに来る人は、こういうお酒や料理があったら楽しんでくれるんじゃないかな”と考え、組み立てていきます」

けっして“自分の料理はこういうものだ”と押し付けるのはなく、あくまでホストの人間性を料理の中で表現。そこに来た誰もが喜び、食を介してつながることができる、そんな役割を果たしたいのだといいます。

「料理の中にストーリーを展開したいのです。音楽家やアーティストは、その人の“根源的な何か”をアウトプットして、人に感動を与えています。それと同じ過程を経て、その人の人間性を端的に表すような料理にしたいと思うのです。だからこそ、相手のことを深堀りして、その人の中にある素材を見つけ、それを料理に置き換えていく、そんな作業を繰り返しているのです」

だからソウダさんの料理は、イタリアン、フレンチ、和食といった従来のカテゴリのどこにも属さず、依頼した相手に属し一体化しているのです。

女木島は“何もない”のが魅力

そんなソウダさんは、現在開催中である「瀬戸内国際芸術祭2016」の会場の一つである女木島に滞在。期間限定のレストラン「イアラ」の料理監修を任されています。

「去年の夏、ふとしたきっかけで参加することになった新潟県十日町市の『大地の芸術祭の里』で知り合った総合ディレクターの北川フラムさんからお声がけいただきました。東京を中心に出張料理をしていれば、ちょっと気の利いたスーパーで日本中の食材が手に入ってしまうので、どうしても知った気になってしまう。現地に行って、現地の食材を食べるインパクトがこれほど強烈だとは思いもしませんでした。特にごはんが全然違った。その米が育った場所の水で炊きあげたご飯の味に驚かされたのです。それを体感してから、積極的に地方へ行くべきと思いましたね」

地元の人々との交流の中からインスパイアされることもあるのだとか。その地に降り立った時点で、ソウダさんのメニュー作りは始まるといいます。

「その土地に行ったら、まず街を散歩したり、レンタサイクルでぐるぐる回ったりして、面白そうな居酒屋を見つけるんです。そして地元の食材を使ったツマミとお勧めの酒を注文する。そうすると、お店の主人が嬉しそうに話しかけてくれるんですよね。そこから、この地域の名産や旬の味、さらに食材の仕入れ先なんか聞いたりするんです」

それらの情報をもとに、地元産の調味料や食材を集め、そこでしか成立しないメニューを組み立てていくといいます。

「その時、その場所で作るのが僕のスペシャリテであればいいと思っています。僕が作ったレシピがその土地に残っていければいいなと。新しい伝統料理を作りたいんです。だから、地元で手に入る食材だけを使ってメニューを練りあげていく。普段、皆さんが食べているものが、ちょっとしたアイデア一つでこういった料理になるのだと見せたいのですよね」

地元の人の間で、そんなソウダさんのレシピが拡散。そこから新たな交流も生まれるといいます。

「地元のおばさんに、『こないだルア君のお料理を家で作ってみたんだけれど、ちょっと味が違うのよねぇ』なんて話しかけられて、丁寧に答えてあげたりするのが楽しくって(笑)。そうやって、僕も料理のヒントがもらえて、地元の人にも新しい気づきやきっかけができる。そんな関係が築けるのが何よりも嬉しいですね」

「瀬戸内国際芸術祭2016」の開催期間中は通いではなく、現地で長期滞在することにこだわっているのも、地元の方々との交流に重きを置く姿勢の表れ。最初は“客扱い”だったようですが、生活を共にすることで徐々に“仲間扱い”になっていく、その感覚がなんとも心地よいのだといいます。

「僕が滞在している女木島は、言ってしまえば“何もない”のが魅力のような島。人口も100名そこそこなので、夕方17:20発に高松行き最終フェリーが出港して観光客がいなくなってしまうと、急にすっと静かになって、まるで無人島に来たような感覚になるのです」

そんな時間にひとり、ぶらっと散歩するのが何よりも好きだというソウダさん。その日、一日を振り返って、記憶を定着させたあとは、あまり深く物事は考えず、ぼーっと過ごしているという。

東京の街で刺激を受けるのも好きですが、ここまで何もなさすぎると、感覚も研ぎ澄まされていくのか、小さな変化に気づいたりします。例えば、夕焼けの色や星の位置、風の冷たさ、畑の農産物の成長なんかにも気づいたりします」

季節の変化にも敏感になる、それもリアルに。

「季節によって海の表情が変われば、魚の状態も変わります。例えば鰆も、春先にはあっさりしていたのが、徐々に脂がのってくる。島、海といった大自然と食材、そしてここで暮らす人々と自分が一直線にリンクして理解が深まり、仲良くなれたような気になるのです。それは、旅行よりも深く、移住よりは浅い、数か月の滞在が生んだ産物といえます」

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美味しい料理はあらゆる壁を超えていける

「瀬戸内国際芸術祭2016」春会期終了後、ソウダさんの料理に感動した知人から声がかかって大阪へ。さらにその後に立ち寄った金沢でも出張料理の依頼が入ったのだといいます。今年は旅から生まれる仕事が多いのだとか。

「料理を通じて、地元の人と仲良くなったりできるのも、出張料理人ならではの醍醐味といえます。旅を重ねる毎に、経験値があがって、現在ではどんな調理場であっても、どのような食材が来ても対応できるというか、超えることができる自信はつきました。だから次は言葉の壁を超えたい。意識は海外に向いています」

現地の言葉が駆使できなくても、料理を通じてコミュニケーションが図れる。そう確信したのは、障がい者施設に出張した、その経験によるといいます。

「僕の料理を食べた知人が、『自分が働く施設の子供たちに食べさせたい』といった、その一言から実現した企画でした。最初は警戒していた彼らも、私の作った料理で笑顔になって、それどころか、ほぼ初対面の私に近づいてきて、感謝や感動を必死に伝えようとしてくれました。その姿を見て、僕も感動したのですが、“美味しい料理はあらゆる壁を超えていけるんじゃないか”と、そう思ったのです」

もちろん、言葉だけではなく、食習慣の違いや文化の違いも大きいし、日本と違って、何をどう表現したら感動してくれるか想像しづらい部分はあるといいます。

「だからこそ、もっと深く考え、追求していく。その過程が僕をさらに強くしていくと思うし、そういった経験をする準備は、もうできている気がします」

料理という最強のコミュニケーションツールを携えたソウダさんの旅は、多くの人々を“身近な感動”によって繋いでいくのかもしれません。

(食)ソウダルアさん https://www.facebook.com/eat.ruasoda

インタビュアー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション

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